インドの華
贅沢に大人のグリーンをコーディネート
ナポレオン3世と言えば、通りが放射状に走る現在のパリを造ったフランスの皇帝です。その妃ウージェニは生まれ変わった都に産声を上げたパリファッションのパトロン的存在であり、1867年のパリ万国博覧会の主催者でした。
これは日本が初めて参加した万国博覧会で、浮世絵や漆器がヨーロッパに日本ブームを巻き起こしたきっかけとして広く知られます。ヘレンドもその雰囲気を察してか、柿右衛門写しの「インドの華」を創作して出品したのです。
数年後にウイーンで万国博覧会を予定するオーストリア・ハンガリー帝国の皇帝フランツ・ヨーゼフが視察を兼ねてパリを訪れます。そのときウージェニーは皇帝をエリゼー宮に招待し、"お国"のへレンド製「インドの華」のディナーセットでもてなしたのです。
最高に晴れがましいデビューでした。以来へレンドを日本と結びつける最もシンボリックな作品として、"ヘレンドグリーン"と呼ばれる独特の清楚な緑色とあいまって根強い人気を誇っています。
ではどうして「インド」なのでしょうか?
実は当時東洋の物産はすべてインドに拠点を持つ東インド会社の帆船が運んだもので、日本の柿右衛門にもヨーロッパに向けた最後の出港国インドの名が冠せられたのです。